遺言書を自分で書く必要があるかどうかは、結論から言えば「必ずしも全員に必要ではないが、多くの場合で作成しておくことが望ましい」といえます。遺言書は、自分の財産を誰にどのように引き継がせるかを明確にする法的な手段であり、相続トラブルの予防や意思の実現に大きな役割を果たします。以下では、その必要性を判断するためのポイントを整理します。
まず、遺言書がない場合の相続は、民法で定められた「法定相続」に従って行われます。例えば、配偶者と子がいる場合には一定の割合で財産が分けられます。しかし、この分け方はあくまで一般的な基準であり、個々の家庭事情や本人の意思を反映したものではありません。たとえば「特定の子に事業を継がせたい」「介護をしてくれた家族に多く残したい」といった希望がある場合、遺言書がなければ実現が難しくなります。
次に、遺言書が特に重要となる典型的なケースがあります。代表的なのは、①子どもがいない夫婦、②再婚で前妻・前夫の子がいる場合、③相続人同士の関係が良好とはいえない場合、④不動産など分割しにくい財産が多い場合などです。これらのケースでは、遺産分割協議がまとまらず、紛争に発展する可能性が高くなります。遺言書があれば、分割の指針が明確になるため、トラブルの予防に役立ちます。
また、遺言書には「遺産分割」以外の機能もあります。例えば、相続人以外の人(内縁の配偶者や世話になった人など)に財産を渡す「遺贈」、未成年の子のために後見人を指定すること、特定の遺産の管理方法を指示することなども可能です。これらは遺言書がなければ実現できない重要な意思表示です。
遺言書には、自分で自筆で書く自筆遺言書と、内容を公証人に伝えて公証人が作成してくれる公正証書遺言の2種類があります。自筆遺言は以前は全部自筆で書く必要がありましたが、平成31年1月13日以降は、財産目録の部分はワープロで作成できるようになりました。ただし、ワープロ作成部分についても、必ず署名捺印が必要になりますので、注意してください。

