公正証書遺言
公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)は、本人が公証人の前で口述し、本人の真意を正確に文章にまとめ,公正証書遺言として作成するものです。費用はかかりますが、偽造等の危険性がなく、最も確実な遺言になります。また、公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続が必要ありませんので、相続開始後、速やかに遺言の内容を知ることができます。これは、日本の民法第969条に基づく方式の一つであり、遺言の内容や形式が法的に確実であるため、最も安全で信頼性の高い遺言方法とされています。
まず、公正証書遺言を作成するには、2人以上の証人の立会いが必要です。遺言者は、原則として18歳以上で判断能力を有していることが求められます。遺言者が内容を公証人に口頭で伝え、公証人はそれを正確に文書化し、内容を読み聞かせるなどして遺言者の確認を得たうえで作成されます。証人もその内容を確認し、遺言の成立に関与することになります。作成された公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクがほとんどありません。
この方式の大きな利点は、その法的安定性と信頼性です。例えば、家庭裁判所の「検認」手続きが不要であるため、相続開始後の手続きが円滑に進みます。自筆証書遺言の場合、形式不備や内容の曖昧さから無効となることがありますが、公正証書遺言は専門家である公証人が関与して作成するため、そのようなリスクは極めて低くなります。また、遺言書の存在が明確であるため、相続人間の紛争を未然に防ぐ効果もあります。
ただし、公正証書遺言の作成には手数料が発生します。金額は遺産の総額によって異なりますが、数万円から十数万円が相場です。また、証人の手配や、公証人との事前打ち合わせなどの準備も必要です。さらに、病気や高齢により公証役場に出向けない場合は、出張対応を依頼することも可能ですが、その際は追加費用がかかります。
公正証書遺言は、高齢者や複雑な財産を持つ人、家族関係に不安がある人にとって特に有効な手段です。将来の相続トラブルを避け、遺志を確実に実現するためにも、専門家と相談しながらの作成が推奨されます。