相続廃除とは、一定の事情がある場合に、相続権を持っている推定相続人に対して、被相続人が家庭裁判所に申し立てをすれば、相続から廃除し、相続権を失わせることができる制度です。日本の民法に基づき、相続人が被相続人に対して重大な不正行為を行った場合、その相続人を相続から除外することができます。具体的には、被相続人を殺害したり、遺言書を偽造・隠滅するなどの行為が含まれます。
廃除の申立ては、被相続人だけが行うことができ、家庭裁判所に申請する必要があります。廃除が認められると、廃除された相続人は法定相続人としての地位を失い、相続財産を受け取る権利がなくなります。ただし、廃除された相続人の子供は、その地位を引き継ぎ、相続権を有することが可能です。
廃除の対象となるのは、遺留分の請求ができる相続人、つまり配偶者、直系尊属(親、祖父祖母)、直系卑属(子供、孫)に限られます。兄弟は遺留分の請求が出来ませんので、廃除の対象にはなりません。これは、遺留分の請求が出来ない相続人に関しては、遺言書で財産を渡さないように出来るからです。
令和元年度の全家庭裁判所が受理した「推定相続人の廃除及びその取消し」の総数は320件あります。そのうち既済が208件で未済が112件です。認容が30件、却下101件、取り下げ66件、その他が11件です。(令和元年度司法統計より)
このように排除が認められる可能性はそれほど高くありませんので、申し立てに当たっては十分な根拠を用意する必要があります。
廃除は相続人間の関係を断絶する厳しい措置であるため、その適用は慎重に行われるべきです。家庭裁判所は、廃除の申立てがあった場合、事実関係を詳細に調査し、廃除が相当であるかどうかを判断します。この制度は、相続における公平性を保つための重要な手段の一つです。