・相続対策としての退職金の活用
退職金は、長年働いた功績に対する報酬として支給される一時金ですが、実は相続対策としても重要な役割を果たします。特に中小企業の経営者や役員にとって、退職金を適切に活用することで、相続税の節税や遺産分割の円滑化に大きく寄与することが可能です。
・退職金の相続税上の取り扱い
退職金は、本人が生前に受け取る場合は所得税の対象ですが、本人が亡くなった後に支給される退職金(「死亡退職金」)は相続税の対象となります。ただし、死亡退職金には非課税枠が設定されており、以下の計算式で控除されます:
500万円 × 法定相続人の数
例えば、法定相続人が3人いれば、1500万円までの死亡退職金は相続税の課税対象から除外されます。この非課税枠は他の財産にはない優遇措置であり、相続税の軽減に大きく貢献します。
退職金は、その原資が無いと払うことは出来ません。この原資を作る方法は主に以下の2つがあります。
(1)利益を会社に蓄積し、それを原資にする。
利益を会社に蓄積して現預金等で蓄えておけば、それが退職金の原資になります。ただし、この方法は利益を蓄えるときに税金が発生するという欠点があります。
(2)保険等の活用
保険等を活用して退職金を貯めることができます。過去は全額損金に出来かつ返戻率の良い保険がありましたが、現在はこのような保険は禁止されていますので、4割損金等の保険を活用することになります。この保険等としては以下のうようなものがあります。
①セーフティ共済
セーフティ共済は本来は、取引先が倒産した時の備えとして掛けるものですが、年間240万円まで(最高800万円)損金にして蓄えることが出来るので、これを退職金の原資にすることもよく行われます。800万円まで掛けておくと、退職金を支払う時にこれを解約して、退職金に充てることが出来ます。解約した時は、その額が利益になるのですが、退職金が損金になるのでそれと相殺が出来ます。
②経営者に何かあった時の保証としての保険の活用
会社で経営者保険に加入し、満期年齢は70歳以下ぐらいにします。
支払保険金は一部が損金になり、節税にもなります。
経営者が死亡した時には、会社に入ったお金で被相続人に退職金を払います。
③相続対策だけを考えた退職金
保険の期間は終身または100歳までにし、被保険者は出来れば本人でなく子供にします。その理由は、その方が返戻率がよいためです。
保険を解約して、解約金を経営者の退職金とします。性格としては貯蓄に近いのですが、節税効果が期待できるのと、退職金の非課税枠(500万円×相続人の数)が活用ができる点がメリットです。ある程度年齢がいくと、保険金と解約した時にもらえる金額がほぼイコールになるので、金融商品としての魅力はあまり無いのですが、退職金の非課税枠が使えるので、その点で有利になります。