親が収益不動産を所有していて、そこからの収益が日常の生活で使用する金額よりも大きい場合には、相続財産がだんだんと増えてしまい、相続税の負担が重くなってしまいます。これを防ぐために、収益不動産を子供に贈与して、その不動産からの収益を子供の収益にして、相続財産の増加を防ぐことが考えられます。
ただし、贈与に当たっては、贈与税がかかりますので、この贈与の対象として土地は除外して、建物だけにするのが普通です。また、贈与財産が多くならないように、築年数が古く減価償却が進んで簿価が安くなったものが通常対象になります。あと、不動産取得税や登記費用もかかってきますので、これらの費用と効果を慎重に比較してください。
また、建物だけ譲渡すると、土地の評価が貸家建付地の評価にならなくなり、土地の評価も高くなりますので、この点も考慮して行う必要があります。一般的には、親の年が比較的高齢でない場合には、財産の移転の効果が大きくなるので、移転した方が良いのですが、親の年齢が高く相続発生までの期間が短いと考えられる場合には、財産の移転による効果よりも貸家建付地評価による軽減の方が大きくなる場合が多いので、この対策はとらない場合の方が多くなります。
これらを踏まえて、収益不動産を生前贈与することのメリット、デメリットを整理すると以下のようになります。
*メリット
1. 家賃収入を子に移転できる
収益不動産を子に贈与すれば、その後の家賃収入が子のものになります。親の所得を減らして、所得税や住民税の節税にもつながります。
2. 共有・争族対策になる
子供ごとに不動産を分けて贈与すれば、将来の相続争い(争族)を防ぐことができます。
3. 不動産管理を早期に引き継げる
子が若いうちから運用・管理を学ぶことで、スムーズな資産承継や経営継続が期待できます。
*デメリット
1. 贈与税の負担が大きい
不動産の贈与には贈与税(最高税率55%)がかかる可能性があります。特に高額な収益不動産だと大きな税負担が発生します。
2. 登録免許税・不動産取得税も必要
贈与による名義変更には、登録免許税(固定資産税評価額の2%)と不動産取得税(同じく3〜4%)もかかります。
3. 管理責任も移る
名義変更後は、固定資産税の納付・入居者対応・修繕管理などを子が担う必要があります。知識や準備が不十分だとトラブルの元になります。
4. 後戻りできない
一度贈与すると取り消しが原則不可です。関係が悪化したり、ライフプランが変わった場合でも戻すのは困難です。

