家族信託の受託者を個人にした場合、信託契約期間中に受託者の死亡や病気・事故等により受託者としての業務遂行ができなくなるリスクがあります。そこで、家族信託の受託者を法人にして、このリスクを回避することが考えられます。(この法人のことを「受託者法人」と言います)。
家族・親族で設立した法人(株式会社や一般社団法人など)を受託者にすることで、個人を受託者にする場合よりも信託業務遂行の安定性が増し、信託の継続性が保証されることになります。一方で、信託の費用が膨らんだり、会社運営で意見が分かれる場合がある等のデメリットがあります。
受託者を法人にすることのメリット、デメリットを整理すると以下のようになります。
受託者を個人にした場合 |
受託者を法人にした場合 |
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メリット |
・判断が一人で行え、迅速な意思決定ができる。 ・仕組みがシンプルで分かりやすい。 ・費用があまりかからない。 |
・受託者の死亡や病気・事故等で信託業務が滞ることがない。 ・受託業務についても法人としてのチェック機能(取締役会や株主総会等)を働かせることが出来る。 |
デメリット |
・受託者の死亡や病気・事故等で信託業務が滞る場合がある。 ・受託者の死亡の際に、信託口口座の移行がスムーズにいかない場合がある。 |
・重要な事項については、取締役会や株主総会の議決が必要になる場合がある。 ・申告のための税理士費用や地方税が発生する。 |
信託報酬の処理 | 個人の雑所得 | 法人の所得 |
信託業法の適用 | 不特定多数に対する反復継続性がないので適用外 | 事業目的を工夫すれば信託報酬をもらっても適用外に出来る。 |
なお、受託者が不特定多数を相手に反復・継続して信託の受託を行い、その報酬を得る場合には、信託業法の適用を受け、その受託者には免許又は登録が必要となりますので注意してください。