6.7 信託監督人の活用

家族信託の受託者は、契約書に書かれた内容については、ある程度自由に財産を管理することが出来ます。信託法26条には、「受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。」と書かれており、信託契約の中で制限を加えない限り、基本的には受託者が全面的な財産管理権を有することになります。

この受託者の広範な権限というのは、受託者が適切に権限を行使している限りにおいては非常に便利であり、融通が利く仕組みなわけですが、もし受託者が権限を濫用して、自身に有利な行動をとったり、受益者に損害を与えてしまうようなことも考えられます。このようなリスクを回避するために有効な仕組みが信託監督人の制度です。

信託監督人の役割は、信託契約の中で定めることが出来ますが、主に以下の2つの役割の決め方があります。

①信託された不動産を処分する時に信託監督人の同意を必要とするなど、一定の行為の同意権者として設定する方法
②受託者から定期的に業務報告を受け、受託者が適切に信託財産を管理しているかどうかをチェックする立場として設定する方法

この信託監督人は、弁護士、司法書士、税理士などの士業を指名することが多いですが、場合によっては受託者と別の親族にしてチェック機能を持たせる場合もあります。

受託者は絶対に信頼できる人を任命するのが良いわけですが、信頼できると思っていた人間が、多額な信託財産を動かせる立場に立ったことによって、出来心で不正なことを行ってしまうという例もよくあります。もし、多少でも受託者の行動に不安があるのであれば、信託監督人の活用をぜひ検討してみてください。

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この記事を書いた人

税理士・中小企業診断士・行政書士 落合和雄
2005 年 3 月 税理士士登録(東京地方税理士会所属)
1987 年 1 月 中小企業診断士登録(東京都中小企業診断士協会所属)
2016 年 1 月 行政書士登録(神奈川県行政書士会所属)
税理士登録以降、相続案件に力を入れ、現在年間約 70 件の相続の相談に応じています。また、中小企業診断士として年間約20件の M&A を含む事業承継の相談に応じています。行政書士としては、遺言書の作成、家族信託の支援も数多く扱っています。
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